私は、自身でスポーツジムを経営しており、フィットネクラブ・スポーツ施設専門アドバイザーとしての活動も行っています。
フィットネス業界に関わること32年。
長年、フィットネス業界の流れを見てまいりましたが、進化している部分と時が止まっている部分の両方があります。
そして、時が止まっている部分の方が多いと感じています。
フィットネスクラブ、フィットネス業界の問題を改善しないままでは、この業界は衰退していくと考えています。
既にフィットネスクラブ、ジムの数は飽和状態で会費の価格破壊を起こし、潰れていくフィットネスクラブも急増しています。
この流れが、私個人的には既に衰退期に入っていると思っています。
私が考えるフィットネス業界の一番の問題は、
「単なる場所貸しビジネスになってしまっていること」
だと考えています。
ようは「トレーニング施設の貸し出しをしている」状況だと思います。
コロナの影響で無人、非接触というキーワードが当たり前になり、24時間フィットネスが増え、会員が各々のペースでトレーニングをするという状況が当たり前になりました。
インストラクターに指導を受けるというスタイルは、マシンルームにスタッフがいるフィットネスクラブでもあまり見かけません。
マシン、スタジオ、プールといった昔で言うところの三種の神器を持っているフィットネスクラブも目的志向型ではなくなっていると感じています。
「結果にコミットする」というキーワードが出てきたもののやはり一時のブームであり、その企業自体が結果にコミットしない24時間フィットネスを無数に展開してまいりました。
経営側、運営側、スタッフは、自社は他社とは違うということを認識していると思いますが、ユーザーである会員は、
『どれも同じに見えている』
という状況です。
私は、これが最も重大な問題だと考えています。
ユーザーは、フィットネスクラブ、スポーツジムの違いが分からず、家から近い、会費が安いということだけで多くの人が入会するジムを決めています。
フィットネスクラブとしての基本的な価値が提供できていない
これは、フィットネスクラブが、基本的な価値をユーザーに伝えることができていない、もしくは、価値を提供することができていないためだと思います。
フィットネスクラブの多くは、施設提供型、時間消費型クラブのままです。
目的なしにフィットネスクラブ、スポーツジムに入会している層は間違いなく存在します。
何となく運動しないといけない、暇つぶし解消の手段という層も存在します。
でも、それは、それこそ、目的志向型でないフィットネスクラブやスポーツジム、24時間フィットネスに任せておけば良いことだと思います。
その層に「どうせやるなら結果(成果)を出そう」と言っても聞く耳は持っていただくことはできません。
ただ、本当は目的があるにも関わらず、フィットネスクラブ、スポーツジム側が
「うちはこういう方に来ていただきたいです」
というメッセージを発信していなかったがために、家から近い、会費が安いからという理由だけで、目的志向型ではないジムに入会してしまい、結局は続かず、肉体的にも精神的にも何の変化もなく、退会してしまい
「フィットネスクラブは面白くない」「スポーツジムに行っても続かない」
とその後、フィットネス業界のお客様になってくださらない層を作ってしまっている可能性があります。
何らかの目的を持って入会したお客様に成果を感じていただくことができないためにこの業界そのものの価値を下げていると感じています。
ユーザーがフィットネスクラブ、スポーツジムに求めていることは、
「カラダがより良く変わること」
「健康になること」
です。
これらは、ダイエットをはじめ、カラダづくり、メタボの解消、高血圧や肩こり、腰痛の解消といった様々なニーズも含みます。
会員様が望んでいることは、カラダが変わることであって、筋力トレーニングやスタジオレッスンなどは、あくまでもその手段に過ぎません。
筋トレさえしていれば、カラダなんて何にも変わらなくていい、エアロビクスさえできれば痩せなくてもいい、という層は、今は横に置いておきましょう。
習い事に置き換えて考える
例えば、学習塾に入会するとします。
いつまで経っても成績が上がることのない塾に通い続ける人がどれだけいるでしょうか。
スクールに通うことが目的で、レッスンを受けることだけで満足する人は稀だと思います。
習い事は、まさに目的志向型の施設です。
多くの人は、目的としていることの向上を目的にスクールに入会しますので、上達しないままでは、スクールを辞めてしまうはずです。
これは、どのビジネスでも同じではないでしょうか?
美味しくない食べ物屋さんに行くはずがありませんし、何事においてもユーザーが期待をする基本的な価値を得られないお店は潰れます。
でも、フィットクラブ、スポーツジムは、会員様が何の成果を出さなくても会費を払い続けてくれますし、通い続けてくれる層があります。
フィットネス業界はここにあぐらをかいているような気がします。
フィットネスクラブ、スポーツジムは、会費という対価に見合う価値を提供していないことが大問題だと思います。
フィットネスクラブ、スポーツジムが、地域や社会から必要とされる存在になっていくためには、フィットネスクラブに求められる基本的な価値を提供していくことが必要だと考えています。
これは、フィットネスクラブに働いている人たちの社会的地位を上げるためにも必要なことだと思います。
では、フィットネスクラブ、スポーツジムが、会費に見合った価値を提供するには、ユーザーに伝えるにはどうすれば良いのか?
それは次回お書きしたいと思います。